ラピードとランバート

「隊長、コイツも連れてってくれよ！」 不満げにそう言ったのは、この『足』の持ち主。 ん？と振り仰ぐ間もなく、次には首根っこをくわえられ。 ぷらん、と宙にぶら下がっていた。 「行くぞ、ランバート」 そう言った『たいちょー』の傍らに無言で並んだランバートの歩みに合わせて。 ラピードの丸い体はぷらん、ぷらんと揺れだした。 ちら、と、もといた所へ視線を送ったけれど、もう『その人』は見えなくなっていた。 犬の視力は、あまりよろしくないのだ。 せっかく、出迎えてやったのに。 ランバートの口先で揺られながら、ラピードはただじっと流れゆく街並みを眺めていた。 揺られるラピードの口の先で、くわえた枝先の葉が、踊るように弾んでいた。 ラピードの父ランバートは『軍用犬』だ。 騎士団で、人間の『騎士』と共に任務に就いている。 ラピードは物心つく頃にはもう、騎士団にいた。他の兄弟達は知らない。 ランバートの世話は、主に新入り騎士の二人がしていた。 『ユーリ』と『フレン』。 二人はとにかく、性格が正反対だった。 『フレン』はラピードに優しかった。 優しく撫でてくれて、優しい声をかけてくれた。 『ユーリ』は態度が大ざっぱだ。 足先でぐい、と押しのけられることなんかしょっちゅうだし、かまってやったら「邪魔だ」とか言う。 ときどき夜、ラピード達の納屋にやってきてそのまま寝ていることがあるけれど、どうも『フレン』に怒られて負けるとそうするらしい。そう、ランバートが言っていた。 ──『フレン』のほうが『ユーリ』より強いの？ 違う、と言うように、ランバートは鋭い瞳をゆっくりと瞬いた。 ラピードは首を傾げる。 ランバートの瞳は、どこか楽しげだった。ラピードが道でうっかりすっ転んだ時に見せる瞳に似ている気がした。 ラピードは、干し草に転がっている『ユーリ』を見下ろした。 立てば背が高くて、小さなラピードには顔がよく見えないくらいだけれど、どんな巨人も横になっていれば問題はない。 『ユーリ』は片腕を枕にして、深い寝息を立てていた。 ラピードはランバートを見上げた。 ランバートは伏せた前足に顎を載せて、瞳を閉じた。 ラピードは二人を見比べて、やがて二人の間にころりと転がった。 目を閉じる。 聞こえてくるのは、規則正しい息遣い。 静かな、静かな夜だった。 ‥‥はずなのに。 あろうことか翌朝は、腹に鉄槌の一撃をくらって目が覚めた。 それこそ、目玉が飛び出さんばかりの衝撃だった。 見れば、鉄槌は『ユーリ』の拳で、しかもこいつはまだ夢の中。 なんという寝相。 ラピードはランバートを見上げた。 ランバートはつんと鼻面を上げた。 ──やってしまえ。 ラピードは、くわ、と顎を開けるだけ開いた。 目標、左耳から頬にかけて。 がぶ。 「っぎゃあああっ！」 頬を押さえて飛び起きた『ユーリ』の傍らで、ラピードはランバートそっくりの長い尾を、ぱたんぱたん、と得意気に振った。 『ユーリ』はがさつだ。命令もあまり聞かないし、すぐ喧嘩するし、『せんぱい』にだって頭を下げることはない。『犬の世話係』もまず不平を洩らす。 でも気がつけば、ラピードの傍らにいる人間は、たいてい『ユーリ』だった。 邪険にするのが『仕事中』の時だってことも、もう知っていた。 「ラピード‥‥おまえ、また来るのか？」 歩哨に出かける『ユーリ』の後を追うと、うんざりとした声が返ってくる。 でも、気にしない。 「あ、隊長」 「おう。今から交代か」 振り返れば、『たいちょー』とランバートがやってくるところだった。 「なんだ、ラピード連れていくのか」 「じゃなくて、コイツが勝手についてくんだよ。ランバート、連れてってくれよ」 ランバートが歩み寄ってきて顔を近づけてきた。 ラピードも鼻先を伸ばす。 ──行ってもいい？ ──‥‥気をつけてな。 「おい、ランバート‥‥！」 フイ、と顔を逸らしたランバートに、『ユーリ』が情けない声を上げる。 ラピードは駆けていって、『ユーリ』の足元をくるりと一回りした。 盛大な溜息が降ってきた。 でも、気にしない。 「なに、ラピード連れていくの？」 「ユーリが面倒みるんでしょ。ちゃんと連れて帰んなさいよ」 「俺だけかよ!?」 先に立って歩きだした『赤毛の双子』の後に、『ユーリ』が続く。 『フレン』が大きい体を屈めて、頭を撫でてくれた。 「ラピード。ちゃんとついてくるんだぞ」 分かってる。 一声答えて、『ユーリ』の後を追った。 分かってる。これでも騎士団の一員なのだ。 やがて追いつき、ランバートが『たいちょー』の隣を歩くように、ラピードも『ユーリ』の隣を歩いた。早足だけど、ほら、ちゃんと並んで歩けるんだ。 時折、隣を見上げる。いつ見ても、『ユーリ』の顔はただまっすぐ前を向いていた。 「ちょっとユーリ！置いてっちゃうわよ！」 「うっせーな！交代の時間までまだあるだろう。まだ大丈夫だって」 「あんたねぇ！」 いつのまにか『ユーリ』の向こうに『フレン』の靴が並んでいた。 「なんだよフレン。ちんたら歩いてていいのか？」 「間に合うんだろう？」 「俺時間では、な」 「‥‥抱えて走れば問題ないだろう？」 「甘やかすなよ。つーかそんなことしたら噛みつかれるぜ、きっと。なんたってコイツは親父みたいになる気まんまんなんだからな。ああ、誰かさんみたいに？」 「‥‥‥‥っ」 ちら、と見上げた『ユーリ』の横顔は変わらない。『フレン』の顔は見えなかったけれど、ピリリとした気配が感じられた。 「ぼくは‥‥っ」 「ほら、ちんたら歩いてんなよ。子犬より遅い足じゃ『騎士』なんてやってらんねーぜ？」 「ユーリ！」 ラピード、と声がかかり、ふいに『ユーリ』が走り出した。 もちろん、ラピードも駆けだした。 堅い石畳に爪があたって、軽やかなリズムが追いかける。 目の前には、大きな街の門。その向こうには、茶色の大地と、木々生い茂る森。 ラピードがまだ、行ったことのない『世界』だった。 いつものように夜、『ユーリ』が納屋に「泊まりに」来ていた日の明け方。 騎馬の足音と鼻息で目を覚ました。 『ユーリ』が窓を開けて、外を窺う。 皮肉と心配と不満がごちゃまぜになったような顔で、しばらくずっと見ていた。 ラピードには朝靄の深い、白い空しか見えなかった。 やがて『ユーリ』は窓を閉めると、また干し草に潜り込んで目を瞑ってしまった。 ランバートを見ると、動じた風もなく、変わらず前足に顎を載せて眼を閉じている。 自分達には関わりのないこと。詮索無用──そういうことらしい。 ラピードももう一度、いつもの場所に丸くなって、瞳を閉じた。 『ユーリ』は起きている。 その息遣いに一度ぴくりと耳を震わせたきり、ラピードはただじっとその場にうずくまっていた。 翌日から、『ユーリ』は毎晩、納屋へ来るようになった。 「よう、ラピード。また隣、借りるな」 毛布を片手に、にやりと微笑む。でもどこか、物足りなさを感じるのは気のせいだろうか。 ランバートは何も言わない。 ただいつものようにいつもの場所に、丸くなって目を瞑る。 それを見て、『ユーリ』は自嘲するように眉を下げた。 「ハハ‥‥ありがとな」 そう言って、大きな体を干し草に横たえる。 と、ふいに手が伸びてきて、え、と思う間もなく捕らえられ、抱き込まれた。 「おまえ、あったかいなあ」 思わず突っぱねようとした四肢が、止まった。 ──『ユーリ』？ 腕の中で顔を上げたけれど、顎しか見えない。ベロ、と舐めたら、くすぐったそうに笑った。 抱きしめる腕は細身ではあるけれど、意外なくらい逞しくて、優しかった。 だから、そのままでいることにした。そうしたら、『ユーリ』の言うとおり、あったかかった。 ラピードは眼を閉じた。 窮屈だけれど、あったかくて、心地よかった。 ランバートは「憧れ」だった。 彼が『父親』であることが誇らしかった。だから、彼のようになりたかった。当然のように、『騎士団』で『軍用犬』になるのだと信じていた。 だから、任務に出る『ユーリ』についていく。 けれどそんなラピードを、ランバートは決まって鼻先でころん、と転がした。 まるで、青臭い背伸びをからかうように。 その日。 ランバートは任務がなかった。 『たいちょー』が留守だと、事件が起きない限り、ランバートの出番はない。 ふうん、とだけ、ラピードは鼻をうごめかした。『たいちょー』がいようがいまいが、ラピードは特に困らないからだ。 ただ、ランバートを独り占めできるのは嬉しかった。 中庭の木陰にゆったりと伏せたランバートの腹にぴったりと寄り添って、キラキラと降り注ぐ日差しを眺めた。 少し離れた所で、『ユーリ』と『ちっこいほう』が棒きれを振り回していた。 人間は遊び好きだな、と、ラピードはうとうと船をこぎながら、ぼんやりと思った。 でも、いいことなのだ。 ランバートが暇で、人間達が「遊んでいる」のは、街の誰も、痛い思いやつらい思いをしていない証拠だから。 その上、自分も嬉しい。 そうだ、こんなに幸せなことはない。 カーン…と、小気味よい音と共に、２本の棒きれが青空に飛んだ。 １本は、石畳に。もう１本は、『ユーリ』の手に。 『ちっこいほう』が、何やら文句を言っている。 ランバートが、ぴくり、と耳を震わせ、顔を上げた。 慌ただしい足音が近づいてくる。 戸口に現れた騎士は、ひどく切迫した表情だった。 「二人とも、すぐに来てくれ…！」 ラピードは、ランバートの顔を振り仰いだ。 凛々しい横顔が、人間達のやりとりを見つめている。 父さん？ ランバートは振り返ると。鼻先でラピードの丸い体を、ころん、と転がした。 ラピードが次に顔を上げた時、ランバートはもう立ち上がっていた。 その瞳がラピードを見つめた。 ラピードが大好きな、ラピードと同じ色の瞳。 いってらっしゃい。 ラピードはきちんと座って、ぱたん、ぱたん、と尻尾で地面を打った。 ランバートがふい、と背を向け、小走りに人間達の後を追った。 すらり、と長い尻尾が揺れる様を、ラピードは見送る。 ランバートは強い。誰よりも強い。 だから、ランバートがいなかったら、魔物には勝てないのだ。 『たいちょー』がいない分、ランバートがついててやらないと人間達はダメなのだ。 ラピードはランバートが大好きだった。 かっこいいランバートは、ラピードの誇りだった。 そう、誇りなのだ。 ランバートは誰よりも強いのだから。 だから。 パタン、パタン パタン── 尻尾が石畳に横たわる。 もう誰もいない戸口を見つめたまま、ラピードはしばらくその場を動かなかった。 みんなが帰ってくるまで、ラピードは騎士団の建物の周りを「巡回」することにした。 誰もいないんだから、代わりに留守を守るのが任務‥‥と、誰かに言われたわけではなかったけれど、そう思いこんでいた。 閑散とした空気が、ぴりぴりと毛の隙間に入りこんで貼りついた。 歩く脚が、自然と速まる。何度も耳を震わせた。 練兵場をまわって兵営を見上げ、また中庭に戻って、今度は正面にまわる。 尻尾をピンと伸ばして、鼻先を少し上に掲げて、風を嗅ぐ。 植え込みに潜り込んだ先で、高い硝子窓の向こうに人影を見つけた。 誰だっけ？でも、見たことがある。 見ていると、向こうが気づいて寄ってきた。 「おや‥‥何故こんなところに？」 眼鏡が近づいてくる。ラピードは後ろ足だけ後ずさった。 「‥‥仕方ありませんね。犬を片づける間もなかったでしょうから」 そう言って、男はラピードの体をひょい、と掬い上げた。 ──逃げようとしたのだ。けれど、その間もなかった。 結局、ラピードは犬舎のある裏庭に出されてしまった。 窓も閉められてしまったから、もう戻れない。 開けられないかな、と、窓の隙間に鼻先を押しつけて息を吹きかけてみたけれど、やがて諦めた。 窓から離れて、門の方を見やった。 小さな門は、騎馬や軍用犬が出入りするためのものだ。 ──そう、ランバートはあの門から帰ってくる。 ラピードは門の前に座った。 青空が、茜色に染まり、やがて深い藍へと色を変えても。 小さな体はそのまま、動かなかった。 最初に現れたのは、『ユーリ』だった。 門が開いたのを合図に、ラピードは駆けだした。 「ラピード‥‥っ」 名を呼ばれたけれど、聞こえなかった振りをした。 『ユーリ」が帰ってきたなら、ランバートも一緒のはずだ。 立ちつくす『ユーリ』の足元をまわり、彼が落とした剣の匂いを嗅ぐ。 血の、臭い。 その先へと駆けていき、暗闇の向こうへと期待を向ける。 父さん。 父さん？ ふいに、後ろから抱きしめられた。 強く、掻き抱く腕。 それはまるで、縋りつくように。 「ごめん、ラピード‥‥‥‥‥っ」 そんな声を、ラピードは初めて聞いた。 喘ぐ吐息が、ラピードの耳をくすぐった。 細い腕が微かに震えていた。 ぽつり、と。 雨が降ってきた。 『ユーリ』の顔を、雨粒が打った。 それでも『ユーリ』はしゃがみこんだまま、動かなかった。 いくつもの雨粒が、固く閉じだ瞼に睫毛に溜まり、尾を引いて頬を伝った。 ラピードは、その頬を舐めてやった。 何度も、何度も、舐めてやった。 それから、ラピードと一緒に寝るのは『ユーリ』だけになった。 干し草に一緒に寝転がる。 寒くてその懐に潜り込むと、もっと深く引き寄せてくれた。 寝惚けた拳でぽかん、と殴られることはなくなった。 いつの間にか、犬舎の犬は、ラピードだけになっていた。 それでも別に、寂しくはなかった。 けれど時折、ラピードは門の前に座った──『ユーリ』がいない時に。なんとなく、その方がいいような気がしたから。 青空を見上げ、風の匂いを嗅ぐ。 門の向こう──ラピードがまだ行ったことのない街の門の向こうから吹いてくる、『風』の匂いをつかまえようというように。 ラピードは、大人になったら『軍用犬』になるはずだった。 そのつもりだったし、そのためにここにいるのも知っていた。 でも、まだ『軍用犬』ではなかった。 そう、まだ、ただのちっぽけな子犬でしかなかった。 だから、『ユーリ』達の『任務』にはついていけなかった。 だから、何が起こっているのか、ラピードには知りようもなかった。 ただ、いつもと──ランバートがいたあの頃と空気が違うということだけは感じていた。 夜になると、『ユーリ』が毛布を抱えてやってくる。 少し照れくさそうな顔をして、ラピードの頭を撫でる。 そうして、その日にあったことをぽつりぽつりと話してくれる。 「明日、遺跡に行ってくるな」 その日は小さく笑って、噛みしめるようにそんなことを言った。 「ランバートの敵、討ってくるからな」 まっすぐに瞳を合わせて、『ユーリ』は言った。 ワンッ 短く吠えたら、『ユーリ』は笑った。 笑って、ラピードの頭を振り回すように撫でた。 ──どこか、泣いているようだった。 翌日、出かけていったユーリは、帰ってきた。 ちゃんと、帰ってきた。 「ラピード」 呼ばれて駆けていくと、『ユーリ』がしゃがんで待っていた。 「ほら」 差し出された物を、じっと見つめる。 両端が金色で、長くて、ぴかぴかしている。 匂いを嗅ぐと、微かに──本当に本当に微かに──懐かしい匂いがした。 これは、『たいちょー』の匂いだ。 視線を戻すと、『ユーリ』は悪戯っぽく唇を吊り上げた。 「おまえには、これがいいんじゃないかと思ってさ」 もらってきた、そんなことを言って、促すようにラピードの口元で振ってみせた。 その手首には、魔導器が鈍く輝いていた。 ラピードは、ぱくん、と、金のキセルをくわえた。 「おっ、なかなか似合うぜ」 『ユーリ』が声を立てて笑った。 キセルをくわえたまま、ラピードはその様を見守る。 やがて『ユーリ』は笑うのを止め、ぽつりと言った。 「俺、騎士団やめるんだ」 ラピードは、先を促すように、じっと待った。 「騎士はやっぱ、俺には向いてないんだよな‥‥隊長もいなくなったしさ」 じっと、じーっと、見つめる。 と、彷徨っていた『ユーリ』の瞳が、ばつの悪そうな溜息の後に、まっすぐにラピードの瞳とつながつた。 「だからさ‥‥俺は、俺の信じる道を行く」 そして、続けた。 「一緒に来ないか？ラピード」 ワンッ しゃがんだ『ユーリ』の足元を一回りして、パタンパタン、と尻尾を振った。 「そっか」 すっく、と長い脚が伸びる。 「じゃ、よろしくな。‥‥相棒」 ユーリが笑った。 『軍用犬』だった、ランバート。 ラピードも『軍用犬』になるものだと思っていた。 でも、ランバートは『軍用犬』だったから、人間と一緒に魔物と戦ったんじゃない。 ナイレンを信頼し、その周りの人間を信頼し、だから一緒に戦っていたんだ。 違うかな？違わないんじゃないかな？ そんな気がする。 だからラピードも、信じることにした。 ユーリを信じると決めた。ひょっとしたら、もう少し前から信じていたかもしれないけれど。 それに、ほら。 ランバートがいなかったら、きっと魔物には勝てない。 『たいちょー』がいない分、ランバートがついててやらないと、人間達はダメなのだ。 そして今は、ランバートもいない。 だったら、ついててやるしかないではないか。 翌日、ラピードはユーリと共に、駐屯地の門を出た。 二人並んで街中を抜け、通い慣れた道を行く。 やがて、街の正門が見えてきた。いつも騎士達が歩哨に立っていた、ラピードがランバートを迎えによく行った、あの場所だ。 門の下で、フレンが待っていた。 ワンッと、ラピードは鳴いた。 「ごめん、一人じゃなかったね」 そう、ユーリ一人で旅立つんじゃない。 ユーリとラピード──それから、あの人にもらった『信じる心』と。 「じゃあな」 ユーリが歩き出す。 ラピードも歩き出した。 門の向こうへ。 ──やがて、光さす『箱庭』の外へ。 歩きながらラピードは、空を仰いだ。 「どうした、ラピード」 なんでもない。 見上げると、ユーリは苦笑して、また前を向いた。 見つめる先にあるのは、どこまでも続く青空と赤茶けた大地。 ラピードは、風の匂いを嗅いだのだ。 風は土と草と、ユーリの匂いがした。

2010.1.1

劇場版のラピード視点(妄想コミ)でした^^; ラピードは犬なので、ランバートの死を「悲しむ」ことはなく、 でもラピードなりに、 受け止めた物は重く大きかったのではないかと思うのです。 初めは「お世話係」で「遊び相手」の『ユーリ』から、 肩を並べる相手としてのユーリへと、 同じく世話係をしたであろうフレンではなく、ユーリを選んだのは、 ラピードの中での認識の変化もあったんじゃなかろうかと …むしろ、そうだとおもしろい？ というわけで、妄想してみました。 えーこんなことラピード考えない〜 との苦情は、オテヤワラカにお願いします…(^-^;