昼顔(ひるがお)

秀麗: キャーッ!
劉輝: 秀麗!?
静蘭: お嬢様!どうしましたか!?
秀麗: でで…出たっ…出たの…っ。
劉輝: 出た?何がだ?
静蘭: どこですか?
秀麗: そこ…棚の下…っ。
静蘭: 棚の下…ああ、いますね。
劉輝: 何かいるのか?…ん?ひょっとしてあの黒い――。
秀麗: いやーっ!静蘭静蘭静蘭〜っ!!
静蘭: お嬢様、落ち着いてください。大丈夫ですよ。おまかせください。
劉輝: なんだ、アレを部屋の外へ出せばいいのだろう?余にまかせておけ。せーの…よっ、あ、すばしこいな…。
静蘭: ちょっと、主上…。
劉輝: こら待てっ…よしっ、つかまえた!ほら秀麗。もう大丈夫だぞ。
秀麗: …って、あああ、あなた、手っ…素手で…!?
劉輝: ん?だって、死んでしまったらかわいそうだろう?大丈夫、まだ生きているぞ。
秀麗: そそそそう、やさ、やさしい…のね…っでもそれ以上近づかな…ヒッ…。
劉輝: どうしたのだ、秀麗?
静蘭: …主上。まずその拳に握ったものを、外に捨ててきてください。
劉輝: ああ、じゃあそこの窓から――。
秀麗: バカ!捨てるならもっと遠くに捨ててきてよ!
劉輝: と、遠く?
秀麗: 遠くよ!町の外とか貴陽の外とか、彩雲国の外とか、あるでしょう!?
劉輝: そんな遠くまで行かねばならぬのか!?
静蘭: …門を出たところでいいですから。
劉輝: 分かった…じゃあ、これを持っていてくれ。
静蘭: 昼顔…そういえばずっと持ったままでしたね。
劉輝: だって来てすぐに秀麗の悲鳴が聞こえたから…。
静蘭: そうでした。ではお預かりします。
劉輝: うむ。では、行ってくる。
秀麗: (見送って)…あああもう、信っじらんない!
静蘭: あー…王宮みたいな綺麗な所にはいないんですよ、きっと。だから、主上にしてみればセミを捕まえるのと同じ感覚で…って、お嬢様…何をしているんですか…?
秀麗: 何って?昼顔を生けやすいように切ってるんじゃない。オホホ。
静蘭: オホホってお嬢様、それじゃぶつ切りのネギと変わりませんよ!?
秀麗: やあねえ静蘭、ネギはもっと太いわよ。ね、もっと切っちゃった方がいいかしら。いいわよね、オホホホホ。
静蘭: あの…昼顔の花言葉が『絆』だというのはご存じ……ですよね。
秀麗: 何の事かしら?あ、静蘭、お塩と一番強いお酒、用意しといてくれる?外から帰ったら、手は綺麗にしないとね。
静蘭: はあ(溜息)…劉輝は本当に、運がない…。
秀麗: オホホホホ。

…「黒いの」が何かは察してください。
月城、これがなまえ聞くのもダメなんです〜(涙)。
でも、ほぼ実話(涙)。

2008.5.20脱稿