石楠花(しゃくなげ)
劉輝：	…ん？子供？…王宮の庭に、なぜ子供がいるのだ…？こら、そなたはどこの子供だ。
子劉輝：	こんにちは。
劉輝：	(驚いて)そなたは……。いや…そなた、名は？
子劉輝：	紫劉輝です。あなたは誰ですか。
劉輝：	余も、紫劉輝だ。
子劉輝：	私と同じなのですね。
劉輝：	それはそなたが、幼い頃の余だからだ。(自嘲するように)どうやらここは、夢の中らしいな。…ところで、何を見ていたのだ？
子劉輝：	空を見ていました。
劉輝：	空か。もう夕暮れ時だな…明日も晴れそうだ。
子劉輝：	あの空の色、石楠花色って言うんですよ。
劉輝：	シャクナゲ色か。そなたが抱えているその花の名だな。
子劉輝：	これは、清苑兄上に差し上げるのです。花言葉は『威厳』と『荘厳』、どちらも兄上にぴったりでしょう？清苑兄上は、誰よりも聡明で、誰よりもお強い方ですから。
劉輝：	そうだったな…空の色も、花の名も、その意味も、全部兄上に教わった。余はいつも兄上に守られていた。兄上が、余の世界の全てだった。だが…。
子劉輝：	私は清苑兄上が大好きです。
劉輝：	でも、今の余は、他にもたくさん欲しいものができてしまった。
子劉輝：	清苑兄上よりも？
劉輝：	どれが一番なんて、つけられない。でも、欲しいのだ。秀麗と出会って、楸瑛と絳攸が余の花となって…静蘭がいてくれて…それからはもう、どれも手放せなくなってしまった。それでもいいと、悠舜殿は言う。だから今は、望んでも良いのだと信じることにした。
子劉輝：	信じる？
劉輝：	自分自身を。余は『王』だ。この命が尽きるまで、余は王であり続ける。もう、逃げたりしない。余は余だけの王の道を見つけて歩く。そう、決めたのだ。
子劉輝：	(微笑んで)…では、あなたはもう『私』ではない。
劉輝：	そうだな。
子劉輝：	あなたは『誰』ですか？
劉輝：	余は……彩雲国国王、紫劉輝だ。
	（間）
秀麗：	……ゅうき、起きて、劉輝。
静蘭：	主上、起きてください。
劉輝：	ん……あ、秀麗…静蘭…。
秀麗：	もう夕方よ。外で寝ていたら風邪をひくわ。
劉輝：	ハハ…ん？秀麗、その花は…？
秀麗：	え……あ、これは……。
静蘭：	主上にと、お嬢様が摘んでいらしたのですよ。
秀麗：	べ、別に、そんなたいした意味はないのよ。ただ、きれいだったし…あなたの執務室にちょうどいいかと思って。
劉輝：	石楠花か…。
静蘭：	花言葉は『威厳』ですね。
秀麗：	足りないでしょ、威厳。あなた、王様なんだから、もう少しあってもいいと思うわ。
劉輝：	なるほど…(笑)。ありがとう、秀麗。
秀麗：	…もう戻るわよ。はい、お花！飾るのは自分でやってよね。行きましょ、静蘭。
静蘭：	はい、お嬢様。
劉輝：	ま、待つのだ、秀麗──
秀麗：	待たない。だからほら…早くいらっしゃい──劉輝。
ラジオで緑川さんが「関くん一人でいいよ」と言っていらしたので、一人二役のお話にしてみました(笑)。 そしてツンデレ師匠・法子嬢の秀麗がツンデレちっくになってます(^^;) 2008.3.9脱稿