極楽鳥花(ストレリチア)
秀麗：	そういえばこの間、歌梨さんから文をいただきました。
絳攸：	ああ、碧幽谷か。
楸瑛：	絵だったら大変な値がついただろうね。
秀麗：	絵も描いてありましたよ。
絳攸：	ほう…どんな絵だった？
秀麗：	花です。南の国の。でも、見た目がちょっと変わっていて──
静蘭：	実際に見ていただいた方がいいでしょう。取ってきますよ。
秀麗：	ありがとう。お願いね、静蘭。
劉輝：	南の国の花か…どんな花なのだろうな。
楸瑛：	そうですね…南といえば、情熱的で、見る者を魅惑する美しさをそなえたものが多いですよ。
絳攸：	…楸瑛。まさかとは思うが、お前の言う“花”には、顔も手も足もあるんじゃないだろうな。
劉輝：	なんだ、“花”とは女性のことだったのか？
秀麗：	違うわよ。
楸瑛：	おや、違うのか。
絳攸：	当たり前だ！どうしてお前の思考はいちいちそっちへ向かうんだ、この常春頭！
楸瑛：	怒るなよ、絳攸。冗談だって。
絳攸：	冗談と洒落の才能のない奴が、下手に口を開くんじゃない！
秀麗：	シャレ？
劉輝：	ああ、楸瑛がな、以前『ショウガがなくて…(しょうがない)…』──ムググ(口を塞がれる)
楸瑛：	主上、お願いですから、そこまでにしておいてください。
静蘭：	お嬢様、持ってきました。
秀麗：	ありがとう。
劉輝：	どれどれ……ん？
絳攸：	これは……鳥か？
楸瑛：	鳥だね。
秀麗：	ストレリチア、別名を『極楽鳥花』というそうです。おめでたい席に飾ったりもするそうですよ。
劉輝：	そういえば朝賀で、藍家当主名代がこんなのを頭に載せていたな。
絳攸：	もっと派手ででかかったけどな。いっそこっちの方がまだマシだったんじゃないか、楸瑛？
楸瑛：	いくら弟だからって、あれの感性について私に聞かれても困るよ。
劉輝：	花言葉が添えてあるぞ。えーと…──
静蘭：	「恋の伊達者」「寛容」「気どった恋」
劉輝：	…楸瑛か。
絳攸：	楸瑛だな。
秀麗：	藍将軍ですよね。
静蘭：	藍将軍ですね。
楸瑛：	あー…(咳払い)…否定はしないけれど、何故皆そんな目で私を見るんだろうね。
絳攸：	当然の評価だ。
劉輝：	否定しないのだな。
静蘭：	誤魔化さないだけ救いがありますね。
秀麗：	やっぱりこの絵、藍将軍に差し上げた方がいいわよね。
楸瑛：	えっ!?……いや…でもほら、歌梨殿は、男の私が持っていては不本意なんじゃないかな──
静蘭：	ご心配なく。ご本人が「お金がないなら、この絵を売ってもよくってよオホホホホ」とか、おっしゃっていましたから。
秀麗：	あ、この絵の価値とか、気にしないでくださいね。お礼もけっこうですから。
静蘭：	お嬢様、藍将軍は律儀な方ですから、そこはきちんと言っておいた方がいいですよ。なにしろ『碧幽谷』の絵ですからね。
秀麗：	そうよね。藍将軍、本っ当〜に、気にしないでくださいね！
静蘭：	ええ、本当に、どうぞお気遣いなく、お受け取りくださいね。
楸瑛：	……分かった……謹んで、いただくよ……。
絳攸：	(こっそりと)秀麗…静蘭がついているとはいえ、やはり黎深様の姪だけのことはあるな。
劉輝：	あとで楸瑛を慰めておこう…。
秀麗：	お二人とも、何かおっしゃいましたか？
劉輝＆絳攸：	いやっ、何も！
〈ストレリチア・豆知識〉 一般に『ストレリチア』の呼ばれるのは、『ストレリチア・レギネ』。別名「極楽鳥花」。 『レギネ』とは、「王妃」という意味。 鳥に似たオレンジ色の花を咲かせます。わりとよく咲くそうです。 ちなみに我が家には『ストレリチア・オーガスタ』という種類のがあります。 別名「ルリゴクラクチョウカ」。花の大きさは３０センチにもなるのだそう。 …龍蓮の頭に載せるには、ぴったりの大きさのような気がします(苦笑)。 ゲストに森川さんと檜山さんがいらっしゃるということで書きました。 ５人登場ともなると、なかなか短くなりません(涙)。 2007.12.24脱稿