朝顔(あさがお)
劉輝：	〜〜〜〜♪(鼻歌)
静蘭：	主上…何か良いことでもありましたか？
劉輝：	分かるか？
静蘭：	それはもう…ひょっとしてお嬢様から文でももらいましたか。
劉輝：	その通りだ。よく分かったな。
静蘭：	料紙を後生大事に持っていらっしゃるのを見れば、なんとなくそうかと。
劉輝：	そうか。しかし秀麗も、わざわざこのような文を寄こさずとも良いのにな。余はいつだって秀麗、そなたを受け止める準備はできているぞ。
静蘭：	……は？
劉輝：	確かに女性の側から言い出すのは、はしたないという考えもあるのかもしれんが。しかし仮にも、いっときは夫婦の間柄だったのだから、遠慮することはないのだ。ああ、静蘭、安心して良いぞ。秀麗は余が必ず幸せにするからな。
静蘭：	…主上、薔薇色な夢物語を果てしなく広げていらっしゃるところを恐縮ですが。お嬢様の文には、いったい何と書かれていたんですか。
劉輝：	見たいか。
静蘭：	ぜひ。
劉輝：	しょうがないなぁ。特別だぞ。
静蘭：	拝見します。
(秀麗の声で)：	「アサガオがさいたよ」
劉輝：	２枚目もあるぞ。
(秀麗)：	「いつもかわいがっていたアサガオだよ」
静蘭：	……これだけですか？
劉輝：	簡潔で無駄がなく、しかも情緒あふれた文だと思わないか。
静蘭：	ああ、一行だけの文を送られる主上には「文」に見えるかもしれませんね。で？この一行文のどこをどうとったら、先程の解釈につながるんですか。
劉輝：	アサガオの花言葉は「あなたに結びつきたい」だろう？「アサガオがさいた」ということは、秀麗も余への思いにようやく気づいたということで──
静蘭：	『儚い恋』、というのもありますが。
劉輝：	………(沈黙)……………あにうえぇぇ(泣)
静蘭：	誰ですか誰のことですかそれはそれとも私の後ろに亡霊でもご覧になりましたか？『主上』？
劉輝：	余のっ、余の思いは、はかなくなんかないぞーっ！秀麗ー！
静蘭：	(騒ぎ続ける劉輝の隣で思案して)…だがこの字は確かに、お嬢様のものだ。しかし我が家のアサガオは、まだ咲いていないのに…。
劉輝：	兄う…いや、静蘭！これはどっちの意味なのだ!?
静蘭：	私が知るわけないじゃないですか。
秀麗：	あら、静蘭と劉輝。２人そろって何の話をしているの？
劉輝：	秀麗〜っ！
秀麗：	なっ、なによいきなり飛びついてこないでよ！
劉輝：	秀麗は余と結ばれたいのだろう!?そうなのだろう!?
秀麗：	はあ!?なにまた頓珍漢なこと言ってるのよあんたは！
静蘭：	お嬢様、このような文を主上に送られましたか？
秀麗：	文？…やだ、なんでこれがここに？あっ、私、もしかして、間違えて送っちゃった…？
劉輝＆静蘭：	間違えた？
秀麗：	お、オホホ…これ昔、お寺で子ども達の書き取りのお手本にしていたものだわ。
劉輝：	お手本…。
秀麗：	そう。子ども達に「全然分かんない」とか「ちんぷんかんぷん」とか言われて。例題が欲しいって言うから、適当に書いたのよ。余白がもったいなかったから、書き付けに使おうと思って持って帰ったんだけど…他の 紙にまぎれちゃってたのね。
劉輝：	……………はあ(脱力)
秀麗：	どうしたの？劉輝。
静蘭：	(苦笑まじりに)まあ…いろいろあったようですから。
秀麗：	ふうん…なんだかよく分からないけど、間違って送って悪かったわね。
劉輝：	アサガオ…秀麗のアサガオ…(泣)
秀麗：	なあに？アサガオが欲しいの？だったら、うちのが咲いたら贈るわよ。
劉輝：	余が欲しいのは花ではない。
秀麗：	そ、そんなに拗ねなくても…。ねえ劉輝、アサガオのもう一つの花言葉を知ってる？
劉輝：	『儚い恋』か？
秀麗：	それもあるけど…あのね、「固い約束」っていうのよ。
劉輝：	………秀麗は、余と約束をしてくれたな。
秀麗：	そうね。(笑)
劉輝：	…余は、紅いアサガオがいい。
秀麗：	いいわ。約束ね…『劉輝』。
ご当人が演じてくださったミニドラマは、↓から。 ※第２０回の20分過ぎあたりになります。 2007.6.13脱稿